陰陽師が唱える呪文「急急如律令」の意味と使い方!安倍晴明は本当に使っていたのか?
「急急如律令」、それは陰陽師が唱えていたとされる呪文。 かつて安倍晴明も使っていたと言われる陰陽師ならば唱えていて当然とされるほど有名な呪文ですが、果たしてその意味とは?その呪文の使い方は? 急急如律令という呪文の全てを大公開!

目次
そもそも急急如律令って?
急急如律令(きゅうきゅう‐にょりつりょう)という言葉をご存知でしょうか?
あまり日常的に使わない言葉なのですが、実はある特定の部門では有名な言葉なのです。
この言葉は元々中国漢代に、公文書の末尾に添えて、「急々に律令のように行え」という意味を示した言葉です。
そして、後に道家や陰陽師、祈禱僧などが魔を払う呪文の結びとした言葉になっていきます。
さらに、お守りや護符などにもこの言葉は使用されています。
それでは、ここでいう陰陽師とは何か? ということについて説明していきます。
陰陽師
陰陽師とは平安時代にあった官職の一つで、祭祀や占術などを行う祈祷師でもあります。
「陰陽五行」という思想に基づいて術を行い、主に吉日凶日の判断や風水、天体観測に暦の作成を担っていました。
現代での陰陽師に対する魔術師や霊能者のようなイメージが台頭し始めたのは平安時代からで、呪術や悪霊払いなどの活動が活発化したのもこの頃からだといわれています。
陰陽五行思想
陰陽五行思想とは、この世は陰と陽に二分されておりまたその中でも万物は火、土、金、水、木と5つの物質で構成されているという思想です。
急急如律令の意味
急急如律令の意味は前にも述べましたが、「急急に律令のごとくに行え」の意味を表した言葉です。
読み方は「きゅうきゅうにょりつれい」と読みます。
基本的には陰陽師や祈祷師が使う呪文の結びに使われており、「物事をこのように至急行え」とするやや強制を含む、文章となっています。
魔を祓う呪文や、時には誓詞のなどの末尾に使用されることも多いようです。
意味の内容から、何かに対して命令してやらせるというものですが、「急急如律令」の他の意味としては邪悪な物に対して「早々に退散しろ」という意味が含まれているため、陰陽師などが呪文の結びとして使う上で、非常に重要な言葉として位置付けられていました。
急急如律令
これは夜中他行符といい、これを持つことで、怪しい出来事に遭うことがないという、厄払いの効果もある護符でした。
当時の権力者にとって護符は非常に重要な身を守る手段のひとつでした。
陰陽師が書く護符の中で「急急如律令」はかなり需要の高い呪文でありました。
何故ならその言葉にこめられた意味が呪文の効果を強化するほか、「急急如律令」自体が厄払いとして効果的な呪文であったからです。
中国由来の言葉「急急如律令」
「急急如律令」の由来は、中国に書かれていた書文の言葉がその由来とされています。
この言葉が日本に伝わってきたのは、中国の漢の時代の頃、日本とやりとりしていた公文書の結びに必ず使われていた言葉だと言われています。
元々は強い語気で「こちらの指示したことを早くしなさい」という半ば強制的で急かす言葉だったようで、当時大国であった中国と日本との明確な立場の差を表しているようです。
陰陽師が書いた呪符、霊符
陰陽師の存在
この時代の陰陽師は、天体観測をして吉兆を占う、現代でいう気象予報士であり祈祷師でもありました。
陰陽師たちの行う気象予報は星の読み方や風の吹き方、雲の動きと精密なデータで天候を占っていました。
当時は現代と違い農耕が非常に大事な社会であったこともあり、陰陽師たちの行う天気の予測は、時の政府に大変重宝されていました。
現代でおけるアニメや映画などのフィクションの世界では陰陽師=魔法使いのような印象を持つ方は多いと思いますが、実際には、確かに陰陽師たちは天気の予測の他にも、呪術などの技術も納めています。
陰陽師たちが台頭する前は、呪禁師という呪術を専門的に扱う職業があったのですが、陰陽師という職業が官職として扱われることで廃止され、その知識が陰陽師たちに伝わり引き継がれていったのです。
もっとも、呪文を使って魔物と戦うということに使われるわけではなく、主に病気などの魔を滅するなどの事に多く使われていました。
しかし一方、中には他人を呪殺するために呪術を使う者も多く、そういったことの所作が現代における陰陽師の印象を裏付けたのかもしれません。
安倍晴明
現代において、陰陽師と聞けば真っ先に思いつくのが安倍晴明ではないでしょうか。
鎌倉から明治まで陰陽寮と呼ばれる国の管理する陰陽師たちの部署を、代々管理し続けてきた安倍氏の祖であり、妖怪や魔物、幽霊退治の逸話に事欠かない人物でもあります。
安倍晴明は出世こそ遅かったものの、その才覚は貴族たちの間でも有名で、「那知山の天狗封じ」や疫病神退治など行ったとされています。
また安倍晴明を題材にした書籍、映画などの作品も多く、その没後から間もなくして、その存在の神秘化が進んでいったと思われます。
陰陽師を題材とした作品
陰陽師を題材とした作品は多く、その人気ぶりはかなり高いようです。
夢枕獏氏の書いた小説「陰陽師」は映画化され、俳優の野村萬斎が安倍晴明役としてキャスティングされ、大人気の作品となりました。
また、アニメ作品でも「東京レイヴンズ」や「双星の陰陽師」など多くの作品があり、現代でも陰陽師に対する強いあこがれみたいなものが感じられます。
陰陽師
映画「陰陽師」
【あらすじ】
源博雅は上役から依頼を受けて安倍晴明の元を訪れ、友人関係をむすぶ所から物語は始まります。
丁度その頃、時の左大臣藤原師輔の娘任子の出産により、自分の勢力が弱くなり嫉妬心を燃やす右大臣藤原元孝の心中に付け込み都を滅ぼそうとする芦屋道尊という人物がいました。
そして源博雅と安倍晴明が組んで、この芦屋道尊の悪だくみを阻止しようと奮闘し、刀による立ち廻りの場面や呪術比べなど、スペクタクルなアクションが楽しめる大作となっています。
その人気ぶりから「陰陽師Ⅱ」という続編が公開され、こちらも人気となりました。
東京レイヴンズ
急急如律令(オーダー)が有名になった小説。
この作品では現代の東京で起こる霊的災害、通称「霊災」に対して立ち向かうため、陰陽師「闇烏」を目指す少年少女たちの学園ファンタジーの小説となっています。
この作品では「急急如律令」のことをオーダーと呼んでおり、設定としては、複雑で習得が難し良い陰陽術を、夏目の先祖がこれを簡素化し、一般化したとされています。
近現代において「急急如律令」という言葉を、端的にオーダーとして表すことで分かりやすくしているようです。
原作では「急急如律令」に「オーダー」とルビを振られていますが、アニメでは「急急如律令」の言葉は、最初から「オーダー」として使用されています。
テレビのアニメ化もされており、このアニメは2013年10月から3月まで放送されました。
アニメは全部で24話からなり、アニメの中でも「オーダー」という言葉が使われ、1~19話までコミカルなショートコントで構成されていました。この頃「オーダー」という言葉がちょとしたブームとなりました。
アニメのDVDも全8巻として発売されこちらも「オーダー」が語られ、ドラマのCDも発売されています。
陰陽師は本当に急急如律令を使うのか
陰陽師は本当に「急急如律令」を使うのか?と疑問に思われる方もいらっしゃると思いますが、事実護符などには「急急如律令」の言葉が多く書かれています。
有名なものの一つとしては、式神やキョンシーなどを操る札などです。
その他にも有事の際の公約文にも使用されることがあり、陰陽師だけでなく、時の政府の用いた文書などでもよく使用されていた言葉です。
喼急如律令
「急急如律令」の文字には二種類あり「喼急如律令」と書かれることもあります。
現代日本では「喼」の字は一般漢字ではなく、日常ではほとんど使うことがないようです。
「喼急如律令」は中国の漢の時代の公約文からそのまま使われていると考えられており、日本では「急急如律令」が一般的です。
急急如律令という言葉に込められた効果
急急如律令は上記で説明したように「早く●●をしなさい」という意味が込められています。
ではこの言葉を呪文として使用した際、どういった効果が得られるのでしょうか。
実は急急如律令は単体で使用しても、強い呪文としては成り立ちません。
もちろん、急急如律令はそれ単体で「早々に退散せよ」という魔を祓う意味を持ち合わせていますが、このままだと相手が定まらないため効果が弱くなってしまうのです。
「はやくやりなさい」「さっさとどこかにいきなさい」だけでは、一体何をすればいいのか分かりませんし、誰に語り掛けているのかも不明です。
そのため、その欠けた部分を補うの呪文が作られるようになりました。
護符
急急如律令と他の呪文
陰陽師が使う呪文は、多種多様にありますが特に有名なものを上げるとすると、本記事で扱っている「急急如律令」や「九字」、「言葉の呪符」などがあげられます。
中でも「九字」は『本当にあった怖い話』などでテレビの番組でも取り上下られることもあり、知っている方も多いと思われます。
九字
有名なものとして
『臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前』
という真言宗や密教が唱える呪文です。
陰陽道の九字はこれとは少し変わっていて、『青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・帝台・文王・三台・玉女』
四神、神人、星神の九星九宮を九字風に置き換えたものでして、これを唱えながら両手で手印を刻む『剣印の法』と四縦五横の格子を描いて九字を唱える『破邪の法』があります。
言葉の呪符
「言葉の呪符」とは、信仰する神様や、との時の目的や状態によって呪符の構成が変わりますが、毎朝朝日に向かって唱える呪文の事を指します。
呪符、というのは呪文というよりも暗記した内容をなぞるだけの行為に近いからでしょう。
呪文の内容を説明すると「自らの生活環境を正し四柱神の加護により周囲を聖別し最後に五陽霊神に願い奉る」といった内容で、毎日の自分の生活を律するために用いられていたようです。
主に急急如律令とセットで使われる呪文
では急急如律令はどういった呪文と共に使われていたのでしょうか。
霊を上げるとするのならば、『六根清浄急急如律令』が有名です。
内容としては、六根(目・鼻・耳・舌・身・意)を至急清めろ、というものでして六根清浄という呪文に急急如律令が更に強化している内容となります。
護符
その他にも、護符に使われるケースが多いのが「急急如律令」です。
・不吉な夢を見た際に用いる「祓悪夢符」
・疫病にかかった際に「諸病治癒符」を飲み下し、
・危険な目に合わない様に「夜中他行符」を肌身離さずつけることで、平安貴族たちは己の身を守ってきました。
「急急如律令」はそういった護符の効果を強めてきたのです。
式神符
また式神符にも急急如律令が書かれていることが多いです。
特にこの呪文が書かれていることが多いのは「擬人式神」という形代(ヒトの形をしたもの)を用いたものになります。
厄払いや、身代わり、お守りとしての効能が期待できますが、悪用されることもあります。
その一つが藁人形です。
藁人形も擬人式神で、釘を刺されることによって呪いを相手に掛ける役割があります。
式神
普段身に着けることで自らの身を守ってくれる式神ですが・・・
無残
一度厄にあたったり、身に直接的な被害が及ぼうとすると、このように「無残」が破れて身代わりになってくれます。
陰陽師安倍晴明の愛用した呪文
安倍晴明の優秀な理由
陰陽師が使う術は、ほとんどが独自のものではなく、なんらかの由来をもっているものがほとんどです。
「急急如律令」は中国の公約文ですし、「九字切り」は真言宗から来ています。「言葉の呪符」も信仰に基づいているものが基盤となっています。
陰陽師の優劣を決めるのは精神力だけでなくその幅広い知識や術に対しての理解の深さが物をいうわけです。
陰陽師の中でも安倍晴明は特に優秀であったとされるのは、特にこういった部分が秀でていたからもしれません。
安倍晴明が特に有名な呪文の中ではやはり『式神』と『五芒星』でしょうか。
晴明の式神は12体あり、どれも悪業罰示式神と呼ばれる、いわゆる悪霊を式神として操っていたとされています。
また五芒星は『安倍晴明桔梗紋』とされ、「九字切り」の際に用いられたとされています。
安倍晴明と陰陽術
安倍晴明の術に関するエピソードはかなりあり、中には手を触れることなくカエルを潰した、木の葉で敵を切り刻むことができたなど驚くべき内容も多々あります。
また、一説では安倍晴明の母は白狐であるともされており、母から受け継いだ霊能力によって陰陽師としての才覚を花咲かせたとも言われています。
安倍晴明自身が早い時点で物語の題材として扱われていたことから、どこからどこまでが真実かは不明のようです。
ですが、安倍晴明が優秀な官僚として、また陰陽師として時の政府に尽力していたことは間違いなさそうです。
現代における急急如律令
現代において、国が管理する陰陽師自体はいなくなりましたが、民間では陰陽師を名乗る方が今も活動しています。
また面白いことに安倍晴明の子孫である第27代安倍晴明もいらっしゃるようで、興味深いのですが彼らが今もっとも盛んに活動している分野は、主に占いや護符などのスピリチュアルな分野のようです。
また過去の陰陽師たちの流れを汲んで、鑑定や占術、護符に縁結びなどを現在でも盛んに行っているようです。
また、護符やお守りはまだ大事にする人が多いので、「急急如律令」の言葉自体も、その中に使われているようです。また、特殊な目的で使われている場合も有るようです。
縁切り
実は「急急如律令」は、縁切りにも最適な呪文の一つとして位置づけられています。
魔を祓う、厄を祓うことができることから、悪縁を遠ざけることできるとされています。
今日では、「縁切り神社」など縁切り自体も注目されています。
家族との軋轢、職場での悪縁を切るために「縁切り符」などが求められることも多いようです。
当然ながら「急急如律令」の言葉で、効果を強化したものが多いかもしれませんね。
昨今の縁切り事情
悪縁を切って、良縁を結ぶという、縁切り神社やパワースポットは最近かなり人気のようです。
それに伴い縁切りグッズである「縁切り符」などの護符やお守りも求める人が多くなっています。
現代社会のようなストレスの多い状況の中、こういった縁切りグッズなどが人々の間で複雑化した縁を断ち切り、整理するのに丁度良い物なのかも知れませんね。
まとめ
いかがだったでしょうか?
「急急如律令」の言葉は現代でもまだ通用する呪文であり、平安時代から続く陰陽師という存在が今も連綿と続いているのだと思うと何か考え深いものがあります。
皆さんも「急急如律令」や護符、陰陽師などに興味がおありでしたら、一度その世界に触れてみることをおすすめします。
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